警察を辞めようとすると、必ずこう言われます。

どこに行っても同じだぞ。民間も大変だ。警察がどれだけいいか、辞めてからわかる。
私もまったく同じことを言われました。
当時の私はその言葉を否定できませんでした。
民間を経験したことがないから、反論する材料がなかった。
「もしかしたら本当にどこも同じなのかもしれない」と不安になりました。
あれから2年が経ちました。
警察を辞め、エンジニアとして民間企業で働いている今、あの言葉は半分正しく、半分間違っていたと思っています。
この記事では、実際に両方を経験した私が「民間も大変だ」という言葉に正直に答えます。
・「民間も大変だ」が半分正しく半分間違いである理由
・警察と民間を3つの軸で比較した実体験
・民間に転職して「本当に楽になった」と感じたこと
・それでも民間が向いていない人がいる理由
・「どこも同じ」という言葉に惑わされないための考え方
第1章:「民間も大変だ」は半分正しく、半分間違い
結論から言います。
民間も大変なことはあります。これは本当です。
納期のプレッシャー、理不尽なクライアント、職場の人間関係——これらは民間にも存在します。
でも「警察と同じくらい大変か」と聞かれたら、答えはNoです。
私が経験した警察の「大変さ」は、民間のそれとは質が違いました。
激務の深さ、パワハラの常態化、プライベートへの侵食——これらが民間で同じレベルで起きることは、例外的なケースです。
「民間も大変だ」という言葉の正体
この言葉を言う上司・先輩の多くは、民間を経験していません。
民間を知らない人間が「民間も大変だ」と断言している。
実際に両方を経験した私が言います。警察の方が、圧倒的に大変でした。
第2章:警察と民間を3つの軸で比較する
比較① 激務・残業時間
警察時代
刑事時代の話です。日勤の日は残業で夜22〜23時まで。当直の日は徹夜。
それが2ヶ月間続きました。
非番の翌日に呼び出しがあり、署に向かう途中で「解決したので帰宅してください」と連絡が来たことがあります。
それが一度ではなかった。「休んでいる」という感覚が、ほとんどありませんでした。
民間(エンジニア)になってから
残業はあります。繁忙期には20〜30時間程度の残業が発生することもあります。
でも警察時代と決定的に違うのは、残業時間が「見えている」ことです。
「今月は残業が多い」とわかる。「来週は落ち着く」と見通せる。
終わりが見えない残業と、終わりが見えている残業では、精神的な負荷がまったく違います。
| 項目 | 警察 | 民間(エンジニア) |
|---|---|---|
| 月平均残業時間 | 繁忙期は80〜100時間超 | 繁忙期で20〜30時間程度 |
| 夜中の呼び出し | 頻繁にあり | ほぼなし |
| 休日の確実性 | 保証されない | 基本的に保証される |
| 残業代 | 実態と乖離することが多い | 適切に支払われる |
比較② パワハラ・人間関係
警察時代
怒鳴られることが「指導」として扱われる文化がありました。
「自分もそうやって育てられた」という世代が上に立っているため、問題として認識されにくい。
私自身も、理不尽だと感じる扱いを受けたことがあります。
でも「これが警察だから」と自分に言い聞かせ、ずっと抱え込んでいました。
→ 詳しくはこちら:警察官のパワハラで辞めたい?辞めるべき判断基準と次の動き方
民間(エンジニア)になってから
人間関係の問題がゼロとは言いません。合わない人はいます。
でも「怒鳴ること」が指導として通用する文化は、少なくとも私の職場にはありません。
意見を言える環境がある。「おかしい」と感じたことを上司に話せる。
それだけで、毎日の仕事の心理的安全性がまったく違います。
| 項目 | 警察 | 民間(エンジニア) |
|---|---|---|
| 怒鳴りが「指導」として通用するか | 通用する文化がある | ハラスメントとして扱われる |
| 意見を言える環境 | 階級上、言いにくい | 基本的に言える |
| 問題があったときの相談先 | 限られる | 人事・上司など複数ある |
比較③ プライベートへの干渉
警察時代
独身寮に入れば門限があり、外出時に報告が必要な場合がありました。
車の購入にも口出しをされる。交際相手について聞かれることもある。
私が経験したカマロを購入しようとした話は、今でもよく覚えています。

こんな車、警察官が乗る車じゃねぇ!何かトラブルが起きたとき、お前は責任取れるのかよ!
仕事の話ではない。完全にプライベートの話でした。
「自分は24時間、警察官でいなければいけないのか」と感じた瞬間でした。
民間(エンジニア)になってから
何に乗っていても、誰と付き合っていても、どこに住んでいても、一切口出しをされません。
当たり前のことですが、警察から出た直後はこの「当たり前」に驚きました。
有給を取れば本当に連絡が来ない。
「休んでいる間に電話が来るかもしれない」という緊張感が、完全になくなりました。
| 項目 | 警察 | 民間(エンジニア) |
|---|---|---|
| プライベートへの口出し | 頻繁にある | ほぼなし |
| 有給中の連絡 | 来ることがある | ほぼなし |
| 生活全般への干渉 | 寮生活では特に強い | 完全に自由 |
第3章:民間に転職して「本当に楽になった」と感じた瞬間
比較表では伝わりにくい部分を、具体的なエピソードで書きます。
エピソード①:夜中に目が覚めなくなった
転職して最初の週、夜中の2時に目が覚めました。
「また呼び出しか」と思って携帯を確認すると、何も来ていない。
その瞬間、警察時代は毎晩この緊張感の中で寝ていたことに気づきました。
「ぐっすり眠れる」——これほど精神的に豊かなことだとは、辞めるまで気づきませんでした。
エピソード②:週末に「月曜日が怖くない」と気づいた日
転職して1ヶ月後の日曜日の夜でした。
ふと気づいたんです。「月曜日が来ることを怖いと思っていない」と。
警察時代は日曜の夜になると、翌日の仕事を考えて憂鬱になっていました。
それが「当たり前」だと思っていた。でも当たり前じゃなかった。
「日曜の夜が怖くない」は、思っている以上に大きな変化です
休日の過ごし方が変わります。
月曜日を恐れずに日曜日を楽しめるようになる。
生活の質が、根本から変わります。
エピソード③:「自分の成長」が見えるようになった
警察時代は「自分が成長しているかどうか」がわかりませんでした。
書類を出すたびに赤を入れられる。「まだ足りない」と言われ続ける。
自分がレベルアップしているのか、それとも全然ダメなのか、判断できない。
エンジニアとして働く今は、昨日動かなかったコードが今日動く。
先月できなかった実装が今月できる。成長が数字と実感で見えます。
それが仕事のモチベーションになっています。
警察を辞めて民間に来て「楽になった」と感じているのは、私だけではありません。
「もっと早く辞めればよかった」という声は、警察OBの中で非常に多い。
「本当にそうなのか」と半信半疑の人は、まず外のプロに話を聞いてみてください。
相談するだけで、今見えていない選択肢が見えてきます。
第4章:それでも「民間が向いていない人」もいる
ここまで「民間の方が楽だった」という話をしてきました。
でも正直に言います。民間が向いていない人もいます。
警察の方が向いている可能性がある人
以下に当てはまるなら、転職前に慎重に考えてほしい
□ 「誰かの役に立っている実感」を仕事の中心に置きたい
□ 安定した給与・退職金・年金制度を最優先にしたい
□ 成果主義より年功序列の方が安心できる
□ チームで困難な状況を乗り越えることにやりがいを感じる
□ 警察の仕事自体は嫌いではなく、特定の環境だけが問題
転職の目的が「警察という環境から逃げること」ではなく、
「自分に合った働き方を見つけること」であれば、民間一択ではありません。
たとえば異動で環境が変われば解決するケースもあります。
「辞めるべきかどうか」の判断基準はこちらに詳しく書いています。
→ 警察官のパワハラで辞めたい?辞めるべき判断基準と次の動き方
「民間も大変だ」という言葉の正しい受け取り方
「民間も大変だ」は、完全な嘘ではありません。
でも、その言葉を額面通りに受け取って「じゃあ辞めるのをやめよう」と判断するのは違います。
問題は「大変かどうか」ではなく、「その大変さに、自分が耐えられるか・納得できるか」です。
警察の大変さに納得できているなら続ければいい。
納得できていないなら、外を見る選択肢があっていい。
まとめ:「民間も大変だ」に惑わされないために
「民間も大変だ」は半分正しく半分間違い
民間も大変なことはある。でも警察と同じレベルではない。
警察の方が圧倒的に大変だった3つの点
① 激務・残業時間:終わりの見えない残業・夜中の呼び出しは民間では例外的
② パワハラ・人間関係:怒鳴りが「指導」として通用する文化は民間では少ない
③ プライベートへの干渉:民間では仕事とプライベートが完全に分離されている
それでも慎重に考えてほしい人がいる
安定・使命感・チームワークを最優先にするなら、転職前に本当に民間が合うか確認を。
「民間も大変だ」という言葉に惑わされないために
問題は「大変かどうか」ではなく「その大変さに納得できるか」。
外を知らない人間の言葉より、実際に両方を経験した人間の話を参考にしてほしい。
「どこに行っても同じ」という言葉は、辞められると困る側の都合が含まれています。
真に受ける必要はありません。
一度、外の人間に話を聞いてもらうだけで、今見えていない選択肢が見えてきます。
登録は無料・3分。相談=転職確定ではありません。
次に読む記事


コメント